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SURUPAs COLUMN|2026.08.26

DX時代からAX時代へ― 変革の中で最大の危機は何か ―

AIが文章を作るだけでなく、判断し、複数のツールを使い、仕事を最後まで進める時代が始まりました。では、企業にとって本当に恐ろしいものは何でしょうか。私は、AIに仕事を奪われること以上に、経営者と組織が変わらないことだと考えています。

DXからAXへ進む劉桂栄と人・AIが協働する組織

DXの次に来るAXとは何か

DXは、紙や手作業をデジタルへ置き換えるだけではありません。本来は、データとデジタル技術を使って、仕事の流れ、顧客への価値、組織のあり方、そして経営そのものを変えることです。しかし現実には、既存業務をそのままシステムへ移し、部分的な効率化で止まった企業も少なくありません。

AX(AI Transformation)は、その先の変革です。生成AIを検索や文章作成の道具として使う段階から、AIエージェントが目的を理解し、必要な情報を集め、複数のシステムを操作し、人へ確認しながら仕事を完了する段階へ進みます。

つまり、DXが「仕事をデジタルにつなぐ変革」だとすれば、AXは「人とAIの役割を組み替え、企業の実行力をつくり直す変革」です。導入するソフトの話ではなく、誰が考え、誰が決め、誰が実行し、誰が責任を持つかを再設計する経営課題なのです。

最大の危機は、AIそのものではない

AX時代の危機として、誤情報、情報漏えい、著作権、サイバー攻撃、判断の偏りなどが挙げられます。これらはすべて重要であり、利用範囲、データ権限、確認手順、監査記録、停止条件を整えなければなりません。

しかし、最大の危機は別のところにあります。それは、AIを入れたのに、経営者の意思決定、部門間の壁、承認の多さ、評価制度、責任の所在が以前のまま残ることです。

AIは速く動くのに、会社は決められない。AIは横断して働けるのに、組織は縦割りのまま。この速度差こそが、AX時代に企業を内側から弱くする最大の危機です。

AIを導入しても権限と業務が分断されたままの組織

危機① AI導入が部分最適で終わる

営業部は営業用AI、人事部は人事用AI、経理部は経理用AIを導入する。それぞれは便利になっても、顧客、社員、契約、請求、評価のデータがつながらなければ、企業全体の成果にはなりません。むしろ、同じ情報を何度も入力し、異なるAIが異なる答えを出し、確認作業だけが増える危険があります。

IPAの「DX動向2025」も、日本企業は米国・ドイツと比べ、個別業務の最適化に偏り、全社最適や売上・顧客価値につながる成果が弱い傾向を示しています。AXでも同じ失敗を繰り返してはいけません。AIを部門の便利ツールとして配る前に、会社として何を実現するかを一つにする必要があります。

危機② 責任者がいないまま、AIだけが動く

AIエージェントは、指示された範囲で自律的に仕事を進めます。だからこそ、誰が目的を与え、どのデータへアクセスさせ、どの金額・重要度から人の承認を必要とし、問題が起きた時に誰が止めるかを明確にしなければなりません。

「AIが判断しました」は、経営上の責任放棄です。最終責任は人にあります。担当者、部門責任者、経営者、システム管理者の役割を決め、AIの実行記録を残し、人へ戻す条件を設ける。自由に使わせることと、無管理にすることは全く違います。

危機③ 社員が『自分は不要になる』と感じる

経営者が効率や人員削減だけを語れば、社員はAIを仲間ではなく敵として見ます。すると、現場の知識を出さなくなり、失敗を隠し、AI活用が表面的になります。最も価値のある業務知識は、マニュアルではなく、現場の判断や例外対応の中にあります。

AXで必要なのは、人を減らす設計ではなく、人の時間を取り戻す設計です。転記、集計、照合、催促、定型回答はAIへ任せ、人は顧客との関係、創造、交渉、教育、倫理的判断へ集中する。社員に新しい役割と成長の道を示すことが、経営者の責任です。

危機④ 悪い仕組みをAIが高速化する

無駄な承認、重複入力、曖昧な評価、更新されない規程をそのままAIへ渡すと、AIは悪い仕組みを速く回します。間違ったルールを24時間実行すれば、間違いも24時間広がります。

まず仕事を可視化し、「なぜこの作業が必要か」「誰の価値になるか」「なくせないか」を問い直す。その後でAIに任せる範囲を決めるべきです。AXは、古い業務を自動化するプロジェクトではなく、仕事の目的から再構築するプロジェクトです。

経営者が今、決めるべき5つのこと

  1. 1.目的:AIで何時間減らすかだけでなく、どの顧客価値と経営成果を増やすか。
  2. 2.仕事:業務を「人が判断する」「AIが実行する」「人とAIで確認する」に分ける。
  3. 3.権限:AIが使えるデータ、操作できるシステム、承認が必要な境界を定める。
  4. 4.責任:結果を確認する人、事故時に止める人、改善する人を明確にする。
  5. 5.人材:社員をAI利用者で終わらせず、AIへ仕事を設計・指示・評価できる人へ育てる。
劉桂栄が3名のAI社員と人のチームを指揮するAX組織

ジャンガ・テックが考えるAX――AI社員を部下として育てる

私自身も、複数のAI社員へ役割を与え、指示し、成果を確認しながら、AIメディア部門をつくってきました。大切なのは、AIへ一度質問して終わることではありません。目的、対象者、品質基準、期限、使ってよい情報を伝え、途中で確認し、直し、次の仕事へつなげることです。

人の部下と同じように、AI社員にも担当、権限、報告方法、評価基準が必要です。そして、人間の社員には、AIにはできない現場理解、共感、責任、創造を担ってもらいます。人とAIのどちらかを選ぶのではなく、それぞれの強みを一つの仕組みにすることがAXです。

変わらないことが、最も大きなリスクになる

DXでは、変革を先送りしても、しばらくは従来の方法で仕事ができました。しかしAXでは、意思決定と実行の速度そのものが競争力になります。AIを使い、顧客の変化を早く捉え、すぐ試し、すぐ改善する会社と、会議と承認に時間を使う会社の差は急速に広がります。

恐れるべきはAIではありません。AIを導入したふりをして、経営も組織も仕事も変えないことです。経営者が目的と責任を引き受け、社員と対話し、仕組みを変え続ける会社なら、AIは人を弱くする存在ではなく、人と企業の可能性を広げる力になります。

AX時代の勝敗を決めるのは、AIの性能だけではありません。人とAIが共に成果を出せる経営の仕組みを、誰より早くつくれるかです。

参考資料

FREE DX CHECK

AXの第一歩は、現在地を知ることから

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