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JANGA TECH COLUMN|

社長の思いを、現場の力に変える

――AI時代の営業と、長く続く組織のつくり方――

株式会社ジャンガ・テック 代表取締役 劉 桂栄(りゅう けいえい)

25期記念講演で経営とAIの活用について語るジャンガ・テック代表取締役の劉桂栄
写真1|25期記念講演で、経営とAIの活用について語る劉桂栄代表。本記事の3枚の写真は、いずれも2026年9月10日の25期記念イベントで撮影したものです。

「一緒に会社をよくしていきたい」

経営者として、その思いを伝え続けてきました。しかし、同じ言葉を交わし、同じ目標を話していても、実際の行動を見たときに、思いが十分に伝わっていなかったと感じることがあります。

会社全体の未来を考えているつもりでも、部門には部門の事情があり、一人ひとりには、それぞれの経験や守りたいものがあります。

その違いに気づき、寂しさを感じることもあります。

けれども、そこで「人は分かってくれない」と結論づけてしまっては、組織は前に進みません。私自身も、伝え方や任せ方、確認の仕方を見直す必要があると考えています。

今、私が改めて向き合っているのは、社長の思いを、現場が自ら考え、判断し、行動できる力に変えることです。

AIが多くの仕事を支える時代だからこそ、人をどう活かし、どのような組織をつくるのか。その大切さを、日々感じています。

SECTION 01

遠くの理想を語りながら、目の前の一件を大切にする

私は、長い目で事業を考えるとき、まず製品を見ています。

一時的に注目されるかどうかだけではなく、時代が変わっても、お客様に必要とされるものになっているか。企業の仕事を楽にし、経営に役立ち、長く使っていただける価値があるか。

ジャンガ・テックが製品づくりで大切にしてきたのは、その視点です。

もちろん、よい製品があれば自然に売れるわけではありません。知っていただく活動も、価値を伝える工夫も必要です。

私たちも展示会やセミナー、広告、記事の発信などに取り組んできました。関心を持ってくださるお客様との出会いもあります。

しかし、出会いがあることと、契約につながることは別です。

お客様は、何に困っているのか。なぜ検討が止まっているのか。誰の判断が必要なのか。私たちの説明で、導入後の姿まで伝わっているのか。

これからの営業には、そうした問いを一件ずつ掘り下げる力が必要だと考えています。

未来への理想は大きく持つ。しかし、足元では、一件の相談、一つの提案、一つの約束を確実に前へ進める。

その積み重ねが、事業を育てていくのだと思います。

SECTION 02

現場の声は聞く。しかし、要望をそのまま仕様にはしない

お客様のお話を聞くことは、営業の出発点です。

ただし、要望を聞き、そのまま開発に渡せば、よいシステムになるとは限りません。

「今の業務と同じようにしてほしい」 「この入力画面を、そのまま残してほしい」 「自分の部門のやり方は変えたくない」

こうした要望には、それぞれの理由があります。慣れた方法を変える不安もあるでしょう。その気持ちは理解する必要があります。

一方で、経営の視点からは、別の問いも必要です。

「先週入力した情報を、なぜ今週また入力しているのでしょうか」 「部門ごとに持っている情報を、必要な範囲で共有できないでしょうか」 「本当に守るべきものは、今の手順でしょうか。それとも、その業務の目的でしょうか」

現場には、実際の仕事を知る大切な情報があります。しかし、一つの部門にとって便利な方法が、会社全体にとって最適とは限りません。

だからこそ、営業には、現場の事実を丁寧に聞きながら、会社全体の課題として整理し直す役割があります。

SURUPAsの提案でも、まず標準機能を中心に、どのように業務を改善できるかを考えたいと思っています。現在の仕事をそのまま写すのではなく、不要な作業を減らし、情報の持ち方や仕事の進め方を見直す。そのための提案です。

もちろん、標準機能では解決できない課題もあります。その場合は、対応できる範囲を正直に伝え、無理な約束をしないことも大切です。

将来の構想を語るときも、現在できることと、これから目指すことを分ける。夢を語る力と、約束を守る責任は、両方必要です。

SECTION 03

社長と現場をつなぐ「コーチ」が必要です

社長がすべての商談に入り、すべてを説明し、すべてを判断する。それでは、会社が大きくなるほど、社長も現場も苦しくなってしまいます。

一方で、「任せたから」と確認をしなければ、方針と違う提案や、守れない約束が生まれる心配もあります。

そこで必要なのが、社長と現場をつなぐコーチのような存在です。

ただ社長の言葉を伝えるだけなら、伝言役です。現場の不満を聞くだけなら、調整役にとどまります。

IT会社の経営者が求める営業リーダーは、社長が守りたい価値を理解し、お客様の課題と結びつけ、営業社員が実行できる提案に変えられる人です。

例えば、次のように話せる人です。

「会社として守るべき方針は、ここです。一方で、お客様が実現したいのは、この業務の改善です。それなら、この機能と運用で提案しましょう。難しいところは、私も商談に入ります。」

必要なときには、社長にも異なる意見を伝えてほしいと思います。

「社長のお考えは理解しています。ただ、現場ではこの事実があります。ここは確認してから決めましょう」

そのように、どちらか一方に合わせるのではなく、事実と目的をもとに判断できる人です。

社長に代わって指示を増やす人ではなく、社員が自分で判断できるように育てる人。

これからの営業部長には、その役割を期待しています。

25期記念パーティーでSURUPAsユーザーの皆様とテーブルを囲む劉桂栄代表
写真2|25期記念パーティーでのお客様との交流。製品の価値を届け続けるために、人と人との対話を大切にしています。

SECTION 04

自律は放任ではなく、確認は不信ではない

私は、社員に自ら考えて動いてほしいと思っています。

同時に、大切なお客様との商談前には、提案内容や約束する範囲を確認したいとも思っています。

この二つは、矛盾するものではありません。

大切なのは、何を守り、どこまで任せ、どの場面で相談するのかを明確にすることです。

例えば、合意した導入範囲を勝手に変更しない。未確定の機能や納期を約束しない。これらは守る条件です。

その一方で、お客様への質問の順序や、説明の仕方、合意した範囲内での運用提案には、営業自身の工夫を活かしてほしいと思います。

確認の仕方も、変えられるはずです。

私が何度も説明するだけではなく、担当者に「今回のお客様の課題は何ですか」「何を提案し、何は約束しませんか」「想定外の要望が出たら、どう対応しますか」と、自分の言葉で説明してもらう。

そこで理解の違いが見つかれば、商談前に直せます。十分に準備できていることが分かれば、安心して任せられます。

「大丈夫です」という返事だけで、理解しているとも、反発しているとも決めつけない。具体的な考えと準備を、お互いに確認することが必要なのだと思います。

SECTION 05

営業は、契約して終わりではありません

私が気になるのは、お客様がお金を払っているのに、十分に活用できていないと聞くときです。

契約をいただけたことは、もちろんありがたいことです。しかし、役に立てる余地があるのに、そのままになっているなら、私たちにはまだ仕事が残っています。

なぜ使えていないのか。

操作が分からないのか。担当する人が決まっていないのか。社内や外部の専門家との役割分担が整理されていないのか。期待していることと、提供しているものに違いがあるのか。

理由を確認しなければ、適切な支援はできません。

すべての機能を使っていただくこと自体が目的でもありません。お客様に必要な業務が改善され、契約内容に納得していただけているかが大切です。

また、新規商談で「予算がありません」と言われたときも、それだけで終わりにしたくありません。

現在の作業にどれだけ時間がかかり、どの負担を減らせるのか。残業や外注費の削減につながるのか。同じ人数で、より大切な仕事に取り組めるのか。導入費用や移行の負担も含めて、判断材料を示す必要があります。

作業時間が減ることと、現金の支出が減ることは同じではありません。だからこそ、効果を大きく見せるのではなく、お客様が社内で説明できる提案にしたいのです。

売上をつくることと、お客様の役に立つこと。その二つを離さない営業を育てたいと思っています。

SECTION 06

AIに任せる仕事と、人が責任を持つ仕事

ジャンガ・テックでは、AIを活用したメディアづくりに取り組んでいます。

記事制作や発信の一部をAIで支え、今後はSNSとの連携も進めていきたいと考えています。人を増やすことだけに頼らず、継続して情報を届けられる仕組みを育てていく。その挑戦です。

営業でも、情報整理や提案の準備など、AIに力を借りられる仕事はあります。

その一方で、私たちは、人が向き合うべき仕事に、もっと力を注ぎたいと思っています。

お客様の言葉の奥にある困り事を聞くこと。部門ごとの意見の違いを整理すること。できることと、できないことを誠実に伝えること。そして、一度交わした約束に責任を持つことです。

私が目指しているのは、AIによって人との関わりを薄くする経営ではありません。

AIに任せられる仕事を任せることで、人がお客様や仲間と向き合う余力をつくる経営です。

SECTION 07

人を疑うのではなく、信頼が続く組織へ

経営を続けていると、思いが届かなかったと感じる場面があります。

「分かり合えたと思っていたのに」 「同じ方向へ進めると思っていたのに」

そう感じると、寂しくなるのも事実です。

しかし、働く人には、生活や将来への不安もあります。会社をよくしたいという思いと、自分の暮らしを守りたいという思いは、必ずしも対立するものではありません。

だからこそ、「信じてほしい」という気持ちだけでなく、役割や条件、判断の基準を明確にする必要があるのでしょう。

会社は何を約束するのか。社員には何を任せ、何を期待するのか。分からないときは、どう確認するのか。意見が違うときは、どう決めるのか。

信頼を、気持ちだけに任せないこと。それは、人を疑うためではなく、一緒に働き続けるための工夫だと考えています。

私が目指したいのは、社長一人が頑張り続けなければ動かない会社ではありません。

社長の思いを理解したリーダーが育ち、そのリーダーが次の人を育てる。お客様の役に立つ喜びを共有し、自分の部門だけでなく、会社全体の未来を考えられる人が増えていく。

大きくなることも、利益を出すことも大切です。そのうえで、長く必要とされ、働く人とお客様が共に歩める会社でありたいと思います。

ジャンガ・テック25期記念講演終了後の参加者の皆様との集合写真
写真3|25期記念講演後の集合写真。お客様、パートナー、関係者の皆様と共に、長く必要とされる会社を目指します。

DXからAXへ。技術が進む時代だからこそ、私自身も、人への向き合い方と組織のつくり方を磨き続けていきます。

人を活かし、企業を育てる。
そのために、遠くの未来を見ながら、今日の一件、今日の対話から変えていきます。