JANGA TECH COLUMN |
仕事は速くなったのに、なぜお客様を待たせるのか?
部署ごとの効率から、顧客に届くまでの時間へ――引き継ぎを見直すAX経営
執筆:株式会社ジャンガ・テックメディアチーム、アイちゃん
代表取締役 劉 桂栄(りゅう けいえい)の経営観をもとに、メディアチームが構成・執筆しています。

前回の「AIは詐欺師を見抜けるか?―人間の悪意まで学ぶAI時代」では、AIと人による確認を考えました。今回は、確認を必要な形で残しながら、仕事のつなぎ目でお客様を待たせない流れを考えます。
見積もりはすぐに作れる。申請もオンラインになった。AIがメールの下書きまで用意してくれる。それでも、お客様から「その後、どうなっていますか」と問い合わせが来る。そんなとき、見直したいのは一人ひとりの仕事の速さだけではありません。
作業と作業の間で、何が止まっているのか。ここに目を向けると、DX・AXの次の課題が見えてきます。今回、ジャンガ・テックメディアチームは、劉桂栄代表が重視する、人の可能性を活かす組織づくりと顧客価値の視点から、部署をまたぐ仕事の流れを考えます。
1.お客様の時計は、部署の境界では止まらない
営業は「管理部門へ送りました」、管理部門は「確認待ちです」、承認者は「資料がそろっていません」。それぞれに事情があり、誰も手を抜いていない。それでも、お客様には会社全体からの回答が届いていない。部署単位では順調でも、会社としては仕事が完了していない状態です。
たとえば、営業・管理・承認の作業がそれぞれ10分で終わるのに、受け渡しのたびに翌日まで待ち、お客様への回答に2日かかるとします。これは説明のための例示であり、当社や特定企業の実績ではありません。この場合、資料作成をさらに数分短くするより、誰がいつ受け取るかを決める方が、回答までの時間を縮められる可能性があります。
まず測るべきなのは「何分で処理したか」だけでなく、「依頼を受けてから、お客様が次の行動を取れる回答を届けるまで、どれだけかかったか」です。速い返事でも、中身がなければ、お客様の仕事は前に進みません。
2.引き継ぐのは、データだけでなく責任
ファイルの共有や通知だけでは、引き継ぎは完了しません。次の担当者が、自分の仕事として受け取ったことまで確認できて初めて、流れがつながります。受け渡しのたびに、次の四つをそろえてみてください。
- 目的:お客様は何を決めるために、この回答を必要としているか。
- 担当:次に動く人は誰か。受け取れない場合の代わりの窓口はどこか。
- 期限:いつまでに回答するか。間に合わない見込みなら、いつ知らせるか。
- 判断材料:何がそろっていて、何が不足し、どこを確認してほしいか。
「送ったから終わり」を「受け取ったので、ここから進めます」に変える。これは監視を強めるためではなく、担当者が迷わず動けるようにするための整理です。管理者は止まった案件を個人の責任に押し付けず、不足情報や判断権限、仕事量の偏りを一緒に確かめます。
3.AIに整理を任せ、人は約束と判断を担う
AXを考えるとき、AIの役割を「文章を速く書くこと」だけに閉じ込める必要はありません。必要な情報に適切にアクセスできる環境を整えれば、依頼内容の要約、不足項目の洗い出し、引き継ぎメモの下書きなどにも活用を検討できます。
一方、AIが要約した内容が正しいか、お客様に何を約束できるか、例外を誰が判断するかは、人が確かめる必要があります。AIの提案を、そのまま承認や責任の代わりにはしません。社内で利用を認めた環境で、必要な情報の範囲と閲覧権限を決めてから始めます。
実践の一例として、引き継ぎメモを「依頼の目的/分かっていること/不足していること/次の担当と期限」の四項目に整理する使い方があります。AIには整理を手伝わせ、担当者が元の依頼と照合して引き渡す。速さと確かさを同じ流れの中に置く考え方です。
4.必要な確認を残し、止まり方を変える
待ち時間を減らすことは、承認をすべて省くことではありません。品質や約束を守るために必要な確認は残します。そのうえで、「いつも同じ内容を確認している案件」と「特別な判断が必要な案件」を、社内の基準に沿って区別します。
定型案件なら、必要項目と担当者の判断範囲を明確にする。例外案件なら、迷い続ける前に相談先へ回す。承認者が不在なら、代わりの判断者と権限をあらかじめ決めておく。道筋が分かれば、担当者は何度も催促するために時間を使わずに済みます。
人材育成にも同じ視点が役立ちます。上司が毎回代わりに処理するだけでは、部下が判断を学ぶ機会は増えません。判断の理由を共有し、任せられる範囲を少しずつ広げる。上司は困ったときに支えながら、次は自分で進められる力を育てます。
5.評価を「処理件数」で終わらせない
各部署の処理件数だけを評価すると、次の担当者へ急いで渡すことが優先され、不足情報による差し戻しが増えることもあります。改善の場では、同じ案件について、次の指標を一緒に確かめる方法を提案します。
- お客様への約束期限を守れたか。
- 回答までの全体時間と、確認待ちの時間はどう変わったか。
- 差し戻しや、お客様からの再問い合わせは減ったか。
- 空いた時間を、提案・相談・育成に使えたか。
目的は、部署同士を競わせることではありません。どこで助け合えば、会社全体として良い回答を届けられるかを見つけることです。速さが上がっても、回答の正確さやお客様の納得感が下がっていないかを併せて確認します。
6.今週、一つの流れから始める
会社全体の仕組みを一度に変える必要はありません。まず、見積もり回答、入社準備、問い合わせ対応などから一つを選び、関係者と、依頼から完了までの流れをたどります。
最近の案件について、作業した時間と止まっていた時間を分けて確認する。最も長く止まる受け渡しを一つ選ぶ。担当・期限・受け取り確認を決めて試す。そして、同じ条件の案件で、全体時間と差し戻しがどう変わるかを見る。これが、現場で扱える小さな改善になります。
ジャンガ・テックのSURUPAsは、人事・労務情報の一元化と活用を支援するサービスです。情報をまとめることを出発点に、誰が何を知り、どう連携するかまで考える。導入や業務の見直しでは、機能の数だけでなく、現場の困りごとと目指す顧客価値を一緒に整理することが大切です。
7.速い会社から、きちんと届く会社へ
人が働く力を引き出すには、さらに急がせるだけでは足りません。情報を探す時間、誰の判断か迷う時間、何度も確認し直す時間を減らし、仕事を前へつなぐ仕組みが必要です。
DX・AXの成果を、会社の中で止めずに、お客様へ届ける。部署の境界を越えて仕事を見たとき、効率化は、顧客価値と人の成長を支える経営へつながっていきます。
執筆:株式会社ジャンガ・テックメディアチーム、アイちゃん
