JANGA TECH COLUMN | 2026.09.29
AI時代に問われる「人間の尊厳」と「詐欺への恐れ」
AIが人間に近づくほど、私たちは「人間とは何か」を考えなければならない
株式会社ジャンガ・テック 代表取締役 劉 桂栄(りゅう けいえい)
前回の「AIからSIの時代へ――その由来と未来」に続き、今回はAI時代に守るべき人間の尊厳と、AIを悪用した詐欺への備えを考えます。
AIが急速に進化する今、私たちは便利さだけではなく、人間の尊厳をどう守るかを考えなければならない時代に入っています。
文章、画像、動画、音声、分析、業務代行まで、AIはこれまで「人間にしかできない」と思われていた領域へ入り始めました。
同時に、私はもう一つ大きな懸念を感じています。それは、AIが詐欺や偽情報に悪用される恐れです。
1.本物と偽物の境界が見えにくくなる
AIによって、人の顔、声、文章、動画を非常に自然に作れるようになりました。
「社長の声だから本物」「家族の顔が映っているから本物」「知人からのメールだから本物」と、これまでの常識だけで判断することが難しくなっています。
特に、お金の振込、契約、個人情報の入力、緊急の依頼などは、見た目や声だけで判断しない仕組みが必要です。
2.AIそのものが詐欺師なのではない
AIは道具です。包丁が料理にも使えれば、人を傷つけることにも使えるのと同じように、AIも使う人の目的によって結果が変わります。
優れたAIは、仕事を助け、教育を支え、病気の発見を助け、企業の生産性を高めることができます。
一方で、同じ技術が、偽の電話、偽の動画、偽のメール、偽の本人確認などに使われれば、詐欺はさらに巧妙になります。
3.AI時代だからこそ、人間の尊厳が重要になる
では、AIが人間より速く文章を書き、計算し、分析できるようになったとき、人間の価値は小さくなるのでしょうか。
私は、そうではないと思います。
人間には、共感、責任、信頼、経験から生まれる判断、そして「何のためにするのか」を考える力があります。
人間の価値は、処理速度や作業量だけではありません。
AIによって人間を不要にするのではなく、AIに任せられることはAIに任せ、人は人にしかできない仕事にもっと集中する。これが、私が考えるAXの方向です。
4.「AIを使える会社」だけでは足りない
これからの企業は、AIを使えるかどうかだけでなく、何のためにAIを使うのかが問われます。
社員を楽にするためか。社員を育てるためか。お客様への価値を高めるためか。それとも、単に監視を強め、人間らしさを失わせるためなのか。
同じAIでも、経営者の考え方によって会社の姿は大きく変わります。
AIに何をさせるかを決める前に、人間をどう大切にする会社なのかを決める。
私は、これが非常に重要だと思います。
5.AI時代には「疑う力」も必要になる
これからは、AIを使う教育と同時に、AIに騙されない教育も必要です。
送られてきた情報は本物か。誰が発信したのか。なぜ今、この依頼が来たのか。別の方法で本人確認できないか。
重要な支払い、契約、個人情報の変更などは、AIで作られた可能性のある音声・動画・メールだけで決めない。会社として二重確認、本人確認、承認ルールを整えることが必要です。
6.最後に判断するのは人間である
私はAIを積極的に活用すべきだと考えています。しかし、最後の責任までAIに渡してはいけません。
「誰のために使うのか」「何のために使うのか」「誰が責任を持つのか」。この3つを常に考える必要があります。
AIが進化するほど、人間の尊厳が重要になる。
便利さだけを追いかけるのではなく、信頼、責任、人間らしさを守りながらAIを使う。それが、これからの企業経営に必要な姿勢だと考えています。
